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写真の撮り方とミラーレス一眼の使い方がわかるブログ

『月の撮り方』完全マニュアル ~ 超望遠1600mmの世界へようこそ ~

もくじ

月の撮影は難しい?

月の撮影と聞くと「真っ暗な夜空に浮かんでいる小さな月を撮影するのは、もの凄く難しいだろうなぁ・・・」と思いがちですが、実際はそうではありません。

最低限必要な機材を使ってコツをつかめば、誰にでも模様までハッキリとしたきれいな月の写真を撮ることができますので、ぜひ、チャレンジしてみてください。

~ 基礎知識 ~

まずは、月を撮影するための基礎知識を3つほど知る必要があります。

①月は明るい

夜空が暗いのでピンとこないかもしれませんが、月そのものは太陽光を反射して光っているのでかなり明るいです。

ですので、月だけを撮影するなら何十万円もするような超高性能カメラやレンズは必要ありません。

初心者向けのエントリークラスのカメラと、そのカメラとセットで買えるキットレンズの望遠ズームレンズで十分撮影することができます。

②月の動きは速い

月は地上から見ると動きが遅いためまるで止まっているように見えます。

しかし、実際には秒速1km(時速約3,600km/h)というもの凄い速さで動いているため、大きく撮ろうとすればするほど、画面に収めるのが難しくなって被写体ブレも起きやすくなります。

1000mmクラスの超望遠レンズで画面いっぱいに迫力ある満月を撮影したい気持ちもわかりますが、特に理由がなければ300~500mm前後の望遠レンズで撮影して等倍鑑賞した方がバランスが良いでしょう。

③月は意外と近い

月は遠く地球の外側の宇宙空間にあるのでピントは無限遠(∞)で撮影できそうな気がしますが、実はそうではありません。

月のピント位置は無限遠(∞)ではなくその少し手前になるので、特に望遠レンズでマニュアルフォーカス撮影をする時はしっかりとピント合わせをしなければなりません。

月は遠くにあるからといって安易に無限遠(∞)にセットしてしまうと、微妙にピントが合わないピンボケ写真になってしまうので注意しましょう。

~ 月の撮り方 ~

1.望遠レンズを用意する

月をある程度の大きさで撮影するには、やはり、ある程度の望遠レンズ(300mm以上)が必要になります。

ただ、フルサイズセンサーのカメラは、300mmだと月が少し小さくなってしまうので、なるべく500mm前後のレンズの使用をおすすめしますが、そう簡単には用意できないと思いますので、その場合は300mmで撮影して等倍での鑑賞をおすすめします。

センサーサイズがAPS-Cサイズのカメラの場合は、300mmのレンズでも実質1.5倍の450mmになるので月の撮影には十分です。

なお、望遠レンズが用意できない場合は、月を風景写真の一部として撮影すると良いでしょう。

2.三脚にカメラをセットする

月は手持ちでも撮影できますが、どうしても失敗する確率が高くなるので、三脚を持っている場合はできるだけ三脚を使いましょう。

ただし、重さのあるカメラとレンズに剛性の低い三脚を使用すると、少しの振動や風などで簡単にブレてしまい失敗する確率が高くなってしまうので、必ず使用する三脚はカメラとレンズを合わせた重量に十分耐えられる丈夫な三脚を使用してください。

もし、三脚がない場合は壁などに寄りかかったり、しゃがむなどして体をしっかりと安定させて撮影してください。

3.ISO感度をセットする

ISO感度はなるべく高めにセットしますが、あまり高くするとノイズが目立ったりノイズリダクションで細部がベッタリと潰れてしまうので、上げ過ぎに注意してください。

適切なISO感度イメージセンサーのサイズや撮影条件によって違います。

基本的にはISO400を中心に、ISO200~800の範囲内でセットしますが、超高感度でもノイズが少ないカメラを使っている場合は、ISO感度を800以上に上げてブレなどの失敗を防いでも良いでしょう。

4.撮影モードをセットする

おすすめの撮影モードはマニュアルモード(Mモード)ですが、マニュアルモードは状況が変わった時などにチャンスを逃しやすいので、管理人は個人的に絞り優先モード(Aモード)の使用をおすすめしています。

~ 絞り優先モード(Aモード)について ~

絞り優先モードは、レンズの絞りだけを自分で決めてあとはカメラに任せる半自動の撮影モードで、おもに、被写界深度を自由にコントロールしたい時に使用するモードです。

また、絞りはレンズの解像力のコントロールもできるので、解像度を重視した撮影をする時にもこのモードがよく使用されます。

ただし、他の撮影モードと同じく絞り優先モードも、夜空のような暗いものを撮影しようとすると、夜空が不自然に明るくなってしまうので、必ずマイナスの露出補正をしてください。

ちなみに、こちらは僅かに露出オーバーになってしまった微妙な失敗作です。

5.月にピントを合わせる

カメラとレンズを月に向けてピントを合わせます。

ピントはオートでもマニュアルでもどちらでも構いませんが、マニュアルフォーカスの場合は、安易に無限遠(∞)に合わせずに、自分の目でしっかりと月にピントを合わせてください。

6.セルフタイマーで撮影

月にしっかりピントが合ったら、あとはカメラが動かないように静かにシャッターボタンを押すだけですが、シャッターボタンを押す動作は意外とブレを誘発するので、もし、カメラに「セルフタイマー機能」がある場合は、できるだけそれを使用した方が良いでしょう。

また、一眼レフカメラはミラーボックスのミラー動作もブレを誘発するので、必ずミラーアップをしてからセルフタイマーで撮影するようにしてください。

満月も三日月も撮り方は同じ

月の満ち欠け(月齢)によって撮り方を変える必要はありません。太陽の明るさが変わらない限り満月も半月でも三日月も撮り方は同じです。

ただし、大気の汚れやガスの発生によって微妙に明るさが変化することがあるので、その場合は変化に合わせて露出を補正する必要があります。

よくある失敗は・・・

露出オーバー

月の撮影でよくある失敗は、月の模様が白く飛んで月がまるで「電球」のようになってしまうことです。この失敗の原因は露出オーバーなので、露出補正をマイナスにするなどして露出量を減らせば解決できます。

<失敗例>

手ブレ・被写体ブレ・ピンボケ

次に手ブレ・被写体ブレ・ピンボケによる失敗です。この失敗は月を大きく撮ろうとすればするほど増えてきます。

しっかり撮ったつもりでも微妙に失敗していることがよくあるので本当に困ります。

レンズが300mm前後までなら無対策でも何とかなりますが、レンズが重くて長くなる500mmを超えたら本格的なブレ・ピンボケ対策が必要です。

<失敗例>

~ 作例 ~

作例として20mmレンズから1000mmレンズで撮影したいろいろな月の写真をご紹介します。※()内は35mm換算の焦点距離

1.超広角20mm(35mm換算32mm)レンズ+APS-C

超広角20mm(32mm)レンズで撮影した月です。ここまで小さいと月の模様は必要ないでしょう。カメラは過去に所有していたCanon EOS 50Dです。

20mmレンズで撮影した月(EOS50D)

2.広角35mm(35mm換算56mm)レンズ+APS-C

広角35mm(56mm)レンズで撮影。20mmレンズよりは月が大きくなりました。※カメラ:Canon EOS 50D

35mmレンズで撮影した月(EOS50D)

3.中望遠70mm(35mm換算112mm)レンズ+APS-C

中望遠70mm(112mm)レンズで撮影。月の模様が良くわかるようになってきました。等倍で鑑賞すればそれなりに大きな月になります。※カメラ:Canon EOS 50D

4.中望遠90mm(35mm換算144mm)レンズ+APS-C

中望遠90mm(144mm)レンズで撮影した下弦の月。※カメラ:Canon EOS 50D

5.中望遠135mm+フルサイズ機

中望遠135mmレンズで撮影した満月。完全に露出オーバーで月ではなく電球のようになってしまいました。※カメラ:Canon EOS 5D(フルサイズイメージセンサー

6.望遠300mmレンズ+フルサイズ機

フルサイズセンサーのCanon EOS 5D+300mmレンズで撮影した夕方の月。

フルサイズEOS 5D+300mmレンズで撮影した月

7.望遠300mmレンズ+APS-C

APS-CイメージセンサーCanon EOS 50D+300mm(35mm換算480mm)レンズで撮影した月。キヤノンAPS-Cカメラは焦点距離が1.6倍の480mmになるので、前作例のEOS 5Dよりも少し大きく撮影できました。

8.望遠500mmレンズ+フルサイズ機

フルサイズイメージセンサーCanon EOS 5D+500mmレンズで撮影した三日月。これでようやくAPS-CCanon EOS 50Dの300mm(480mm)と同等の大きさになります。

9.望遠500mmレンズ+APS-C

イメージセンサーAPS-CCanon EOS 50D+500mm(35mm換算800mm)レンズで撮影した満月。APS-C機なので35mm換算で800mm相当になります。このくらいの大きさで撮影するとようやく月を中心に撮影している気分になります。

10.超望遠1000mmレンズ+フルサイズ機

フルサイズ機Canon EOS 5D+1000mmレンズで撮影した月。十分な大きさです。EOS 50D+500mm(800mm)よりも若干大きめに撮れてます。

※レンズは、SIGMA APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSMに2倍のテレコンバーターを取り付けて1000mmとしています。

11.超望遠1000mmレンズ+APS-C

イメージセンサーAPS-CCanon EOS 50D+1000mm(35mm換算1600mm)レンズで撮影した満月。35mm換算1600mmで満月がほぼ画面いっぱいに撮影できます。

※レンズは、SIGMA APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSMに2倍のテレコンバーターを取り付けて1000mmとしています。

画面上下にまだ少し余裕がありますが、月面を観測するわけではないので、これ以上大きく撮影する必要はないでしょう。

~ 1600mm等倍画像 ~

ちなみに、Canon EOS 50D+1000mm(1600mm)レンズで撮影した月を等倍で鑑賞すると、このような感じになります。これだけの大きさなら月面の観測ができるかもしれません。

まとめ・備考

いかがでしたでしょうか。月は1000mm前後の望遠レンズとAPS-Cサイズのカメラを使うことでほぼ画面いっぱいに撮影することができますが、いろいろなバランスを考えると500mm前後のレンズで撮影して等倍で鑑賞するのをおすすめします。

~ 月を撮影した機材 ~

カメラ
レンズ
三脚
  • SLIK プロフェッショナル2

END